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アングラがない時代のアングラ

2008年01月24日

 KIKU at 20:47 | Comments(0) | 時事世相
『煉夢術』というタイトルに惹かれた。
錬金術ならぬ『煉夢術』とは何事か?
そしてカバーのイラストが秀逸であった。

高校生のころ、唐十郎に対する
それほどの思い入れもなく、
本屋での偶然の出会いによって、
僕は唐十郎の戯曲『煉夢術』を読むことになった。

60~70年代のアンダーグラウンド、略してアングラを、
僕は大人としてではなく思春期のころに知った。
当時の若者雑誌である平凡パンチなんかは、
アングラ文化を応援している気配もあって、
高校生の僕は裸のグラビアにどきどきしながら、
この雑誌によって横尾忠則や寺山修二の名前も知った。
このとき唐十郎を読んで、すぐ新宿花園公園へ行けば、
リアルタイムにおもしろい体験ができたのだが、
あいにくそのころの僕は埼玉県で悶々としていた。
同世代の小説家、田口ランディさんは心がけが良いね。
寺山修二の教えに感動してすぐ天井桟敷をノックしたようだ。

出不精で書斎派だった僕が、実際に、
アングラ演劇に接したのは、大学生になってからだ。
なぜか、テント公演をやる大学の演劇研究会に入部。
先輩たちの劇団「無頼派」の旗揚げに立会い、
続けて「夢の遊民社」の旗揚げ公演を見た。
唐十郎は『糸姫』か『下町ホフマン』だと思うが、
初めての唐十郎体験は強烈だった。
佐藤信の黒テントや暗黒舞踏もおもしろかった。

あぁ、これが憧れのアングラ演劇かぁ。

僕は、不条理とか、シュールレアリスムの文学的下地があり、
なんの抵抗感もなく、アングラ演劇を受け入れることができた。
ストーリーとしては、わけのわからん展開を見せる
アングラ演劇を理屈で追いかけようとしたってダメだ。

劇研の内部では、新劇への批判が激しかった。
アングラが政治運動の一環であるという主張もあり、
唐十郎の特権的肉体論とか、吉本隆明の共同幻想論とか、
埴谷雄高の死霊とか、アングラを語る上で「思想」は不可欠だった。
まぁ、難しい顔をして、難解な用語を用いて、
それが女の子たちに受ける時代だったのだね(笑)。

唐十郎は特権的肉体論といって
戯曲によって演じられる役ではなく、
役者がその人間としての存在を賭けて
その場に時空間を背負って立っていることを重視した。
つまり、役になるより、あなた自身になれってことかな。
根津甚八、小林薫、不破万作、四谷シモン、大久保鷹、そして李礼仙。
魅力的な役者がたくさんいて、確かにみんな特権的肉体だった。
それと唐十郎演劇を特徴づけたのは、
やはりテントによる興行スタイルだろう。
唐十郎はその演劇言語とテントによって、
日常と非日常の境がなくなる瞬間を演出した。
ラスト近く、テントのどこかがパアーと開け放たれ、
そこから外の風が吹き込み、
われわれを一挙に異次元へ運ぶ。
われわれを因果律の鎖から解き放ってくれる。
そのドラマツルギーが醍醐味であったようにも思う。

僕は、唐十郎に触発されたオリジナル戯曲を書いて、
その演出をして、テント公演をして、それからワケアッテ、
アングラな日々は、21歳で終わってしまった。
その後の唐十郎やアングラは、追いかけていない。
ここ長野市でも紅テントは何度か公演され、
数年前、20数年ぶりに舞台を見たが、
残念ながら、もはやアバンギャルドではなく、
かつての感動は甦らなかった。

今月の末、1月31日~2月3日まで。
長野市内のネオンホールという小さな空間で、
唐十郎の作品が上演される。
30代の清水隆史さんが演出を手がけ、
長野市内で活動する劇団員やまったくの素人も含め、
20人くらいの若い役者たちが『ジャガーの眼』(1985年)をやる。

いま、なぜ、若者たちが唐十郎なのか。
長野のアングラなるものは、どこへ向かうのか。

カルチャーはつねに辺境から起こるものだが、
善光寺へ向かう王道から少し外れた
ここネオンホールへ、この芝居を観に行きたいと思う。


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